東海道と中山道及び関連遺産群

~近世日本を支えた大動脈~

金谷坂
奈良井宿
箱根関所
二川宿本陣
松本城
中山道木曽路

 近世(江戸時代)になると、日本では産業や経済の発展のために 多くの街道が整備されます。その街道の中でも重要だったのが、 江戸幕府の直轄であり、 主要都市だった江戸と京都を結んだ東海道と中山道です。 この二つの街道は現在では主要街道としての役割を終えましたが、 今でも当時の面影を伝える石畳の道や宿場町、宿泊所である本陣や脇本陣や旅籠などが残っています。 また、この二つの街道は江戸幕府での参勤交代や外交を語るうえでも切り離せない存在であり、 更には近世日本の経済・産業・文化などの多方面においても多大な影響を与えました。
 「近世日本の街道と宿場町の見本」であること、 「江戸幕府の政策や外交」を伝えること、そして 「近世日本の経済・産業・文化との密接な関係」が評価されて、 世界遺産だったらいいな~

目次

  1. STORY1 近世街道と宿場町
  2. STORY2 江戸幕府による政策
  3. STORY3 近世日本の経済、文化
  4. ストーリーを構成する文化財
  5. 似ている世界遺産
  6. 関係する外部サイト
  7. 作成者から
  8. 参考文献・サイト

STORY1 近世街道と宿場町

 まずは、東海道と中山道そのものの特徴を挙げていきましょう。 江戸と京都を、海沿いを通るルートで結んでいたのが東海道で、 内陸部を通るルートで江戸と京都を結んでたのが中山道です。 それぞれの道沿いには1里ごとに土を盛った一里塚が作られ、 通行人に目安となる距離を伝えていました。 また、山中の坂道では、雨が降った時に滑りにくくするため、 石畳が整備されました。 他にも、海や川を越える箇所も存在したことから、 その拠点となる渡し場が複数設けられていました。 このように、通るルートは異なるものの、整備されたものや設置されたものは それぞれの街道で見ることができます。
 次に、宿場町についての特徴を挙げていきます。 まず、それぞれの宿場町では問屋場が設けられ、 宿場町での輸送業務などに携わっていました。 他には、宿泊施設や商家が建ち並んでいましたが、詳しくはSTORY2とSTORY3でまとめます。 また、これらの宿場町の一部では、自然を破壊することなく共存を模索した 町並みが続いており、日本人の自然に対する考え方も今に伝えています。
 東海道と中山道、そしてこれらの宿場町は、その規模や重要性から、 近世日本の街道と宿場町の見本だと言えます。

<もっと詳しく知りたい方はこちら!>

海や川を越える場所って?

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STORY2 江戸幕府による政策

 街道と関係する文化財からは、江戸幕府の政策を見て取ることも出来ます。
 街道を整備した江戸幕府は、街道での警備も重視していました。 東海道と中山道それぞれに二つの大きな関所を設け、通行人を監視していました。 そして、要衝となる地域やその沿線地域には、徳川家と近い関係にある親藩や譜代大名を配置し、 配置された大名は拠点となる城郭から、地方の大名をけん制していました。
 他にも、地方大名を監視させる、江戸幕府を象徴する制度がありました。 地方の大名を江戸に来させて、年の半分を江戸で勤務させる参勤交代です。 その参勤交代の際に、地方大名が用いた街道のほとんどが東海道と中山道で、 彼らが宿場町で利用した宿泊施設が、本陣と脇本陣です。 本陣がメインで、本陣が使用できない場合は脇本陣を利用していました。
 また、東海道は近世日本では数少ない外国使節が使用した道でもありました。 彼らは主に宿場町の他に、沿道の寺院にも宿泊していました。
 以上のように、街道と街道に関する文化財は、江戸幕府の制度や外交も伝えています。

<もっと詳しく知りたい方はこちら!>

親藩と譜代大名の拠点だった城郭はどこ?
外国使節が宿泊していた寺って?

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STORY3 近世日本の経済、文化

 街道を用いていたのは幕府関係者や外交使節だけではありません。 街道を使用したほとんどの人は庶民です。そんな彼らは、この両街道を用いて、 近世日本の経済と文化を発展させていきました。
 商人などの庶民が宿場町での宿泊で利用していたのは、大名が泊まる本陣ではなく旅籠でした。 庶民はこの旅籠で移動や旅行の疲れをとっていました。
 ほかにも、宿場町にはその交通の便の良さを用いて、 生活雑貨や食品などを取り扱う 商人の商家も建ち並んでいました。 更には、宿場町とは異なり、 街道で商売を行っていた商人が集まる商人町や、 特産品を売っていた街道沿いの町なども発展していきました。 これらの商家や町は東海道と中山道なしでは語れないものです。
 そして、東海道と中山道は、多くの文化芸術作品の題材にもなっています。 その代表的な存在が、歌川広重の『東海道五拾三次』です。 近世日本の文化を語るうえでも欠かせない存在でもあるのです。

<もっと詳しく知りたい方はこちら!>

独自の特産品を扱う町って?
東海道と中山道が題材の文化芸術作品は他に何がある?

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ストーリーを構成する文化財

まずは東海道に関する文化財です。全部で41の文化財を選んでいます。(縦スクロールになっています)

  文化財の名称 分類 関連サイト
1 品濃一里塚 一里塚 文化遺産オンラインの該当ページ
2 茅ヶ崎一里塚 一里塚 茅ヶ崎市の該当ページ
3 小田原城跡 幕府・城郭 小田原城公式サイト
4 東海道(箱根旧街道) 街道/一里塚 箱根町観光協会公式サイトの該当ページ
5 箱根関所 幕府・関所 箱根関所公式サイト
6 伏見一里塚 一里塚 清水町観光サイトの該当ページ
7 岩淵一里塚 一里塚 しずおか文化財ナビの該当ページ
8 旅籠 和泉屋 宿場町・旅籠 しずおか東海道まちあるきの該当ページ
9 志田邸 経済・商家 しずおか東海道まちあるきの該当ページ
10 清見寺 幕府・外交 清見寺公式サイト
11 東海道(宇津ノ谷峠) 街道 ふじえだ東海道まちあるきの該当ページ
12 岡部宿 大旅籠柏屋 宿場町・旅籠 藤枝市公式サイトの該当ページ
13 大井川川越遺跡 街道 島田市公式サイトの該当ページ
14 東海道(金谷坂) 街道 島田市公式サイトの該当ページ
15 東海道(菊川坂) 街道 島田市公式サイトの該当ページ
16 川坂屋 宿場町・旅籠 掛川市公式サイトの該当ページ
17 阿多古山一里塚 一里塚 磐田市/市指定文化財一覧(番号116)
18 浜松城 幕府・城郭 浜松市公式サイトの該当ページ
19 舞阪宿脇本陣 宿場町・脇本陣 浜松市公式サイトの該当ページ
20 新井関所 幕府・関所 湖西市公式サイトの該当ページ
21 一里山一里塚 一里塚 愛知県総合教育センターの該当ページ
22 駒屋 経済・商家 豊橋市二川宿本陣資料館の該当ページ
23 清明屋 宿場町・旅籠 豊橋市二川宿本陣資料館の該当ページ
24 二川宿 本陣 宿場町・本陣 豊橋市二川宿本陣資料館の該当ページ
25 吉田城 幕府・城郭 豊橋市公式サイトの該当ページ
26 御油の松並木 街道 豊川市観光協会の該当ページ
27 大橋屋 宿場町・旅籠 豊川市観光協会の該当ページ
28 大平一里塚 一里塚 岡崎市公式サイトの該当ページ
29 岡崎城 幕府・城郭 岡崎城トップページ
30 来迎寺一里塚 一里塚 知立観光ナビの該当ページ
31 阿野一里塚 一里塚 豊明市観光協会の該当ページ
32 有松 経済・特産品を扱う町 名古屋市公式サイトの該当ページ
33 名古屋城 幕府・城郭 名古屋城公式ウェブサイト
34 七里の渡跡 街道 桑名市観光サイトの該当ページ
35 桑名城 幕府・城郭 桑名市公式サイトの該当ページ
36 旧小林家住宅 経済・商家 鈴鹿市公式サイトの該当ページ
37 野村一里塚 一里塚 三重県教育委員会の該当ページ
38 関宿 宿場町 亀山市公式サイトの該当ページ
39 土山宿本陣跡 宿場町・本陣 甲賀市公式サイトの該当ページ
40 水口城跡 幕府・城郭 甲賀市観光ガイドの該当ページ
41 草津宿本陣跡 宿場町・本陣 草津市公式サイトの該当ページ

ギャラリー(全てではありません)

次に、中山道に関する文化財です。全部で53の文化財を選んでいます。(縦スクロールになっています)

  文化財の名称 分類 関連サイト
42 志村一里塚 一里塚 板橋区公式サイトの該当ページ
43 武村旅館 宿場町・旅籠 桶川市公式サイトの該当ページ
44 桶川宿本陣跡 宿場町・本陣 桶川市公式サイトの該当ページ
45 原馬室一里塚 一里塚 鴻巣市公式サイトの国・県・市指定文化財一覧
46 忍城 幕府・城郭 行田市公式サイトの該当ページ
47 藤塚一里塚 一里塚 高崎市文化財情報の該当ページ
48 松井田宿茶屋本陣 幕府・休泊所 安中市公式サイトの該当ページ
49 碓氷関所 幕府・関所 安中市公式サイトの該当ページ
50 旧中山道(碓氷峠) 街道 安中市公式サイトの該当ページ
51 御代田一里塚 一里塚 八十二文化財団の該当ページ
52 真山家 宿場町・旅籠/問屋場 佐久市公式サイトの該当ページ
53 芦田宿本陣 宿場町・本陣 立科町公式サイトの該当ページ
54 笠取峠の松並木 街道 立科町公式サイトの該当ページ
55 和田宿本陣 宿場町・本陣 長和町観光協会の該当ページ
56 中山道(和田峠) 街道 日本山岳会の該当ページ
57 下諏訪宿本陣 宿場町・本陣 本陣 岩波家
58 小野家住宅 宿場町・旅籠 塩尻市公式サイトの該当ページ
59 平出一里塚 一里塚 塩尻市公式サイトの該当ページ
60 松本城 幕府・城郭 国宝松本城
61 深澤家住宅 経済・商家 塩尻市公式サイトの該当ページ
62 木曽平沢 経済・特産品を扱う町 塩尻市公式サイトの該当ページ
63 奈良井宿 宿場町 塩尻市公式サイトの該当ページ
64 中山道(鳥居峠) 街道 塩尻市観光ガイドの該当ページ
65 福島関所 幕府・関所 木曽町公式サイトの該当ページ
66 妻籠宿 宿場町 妻籠宿公式ウェブサイト
67 中山道(馬籠峠) 街道 馬籠観光協会の該当ページ
68 中山道(落合の石畳) 街道 中津川市公式サイトの該当ページ
69 落合宿本陣 宿場町・本陣 中津川市公式サイトの該当ページ
70 紅坂一里塚 一里塚 中山道散策ガイドの該当ページ
71 中山道(十三坂) 街道 瑞浪市公式サイトの該当ページ
72 大湫宿脇本陣 宿場町・脇本陣 瑞浪市公式サイトの該当ページ
73 中山道(琵琶峠) 街道 瑞浪市公式サイトの該当ページ
74 八瀬沢一里塚 一里塚 瑞浪市公式サイトの該当ページ
75 奥之田一里塚 一里塚 瑞浪市公式サイトの該当ページ
76 鴨之巣一里塚 一里塚 瑞浪市公式サイトの該当ページ
77 中山道(謡坂) 街道 ぎふの旅ガイドの該当ページ
78 今渡渡し場跡 街道 ぎふの旅ガイドの該当ページ
79 太田宿脇本陣 宿場町・脇本陣 ぎふの旅ガイドの該当ページ
80 中山道(うとう峠) 街道 各務原市公式サイトの該当ページ
81 武藤家住宅 宿場町・旅籠 各務原市公式サイトの該当ページ
82 犬山城 幕府・城郭 国宝犬山城
83 加納城 幕府・城郭 文化遺産オンラインの該当ページ
84 大垣城 幕府・城郭 大垣市公式サイトの該当ページ
85 清水家住宅 経済・商家 大垣市公式サイトの該当ページ
86 矢橋家住宅 経済・商家 大垣市公式サイトの該当ページ
87 お茶屋屋敷跡 幕府・休泊所 大垣市公式サイトの該当ページ
88 垂井一里塚 一里塚 ぎふの旅ガイドの該当ページ
89 今須宿問屋場跡 宿場町・問屋場 関ヶ原観光ガイドの該当ページ
90 醒ヶ井宿問屋場跡 宿場町・問屋場 米原市公式サイトの該当ページ
91 彦根城 幕府・城郭 国宝彦根城
92 五個荘金堂 経済・商人町 滋賀・びわ湖観光情報の該当ページ
93 近江八幡 経済・商人町 近江八幡観光物産協会の該当ページ
94 今宿一里塚 一里塚 滋賀・びわ湖観光情報の該当ページ

ギャラリー(全てではありません)

文化財の所在地は以下の地図をご覧ください。

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似ている世界遺産

道の世界遺産という訳で、特に「交易路」や「宿泊施設」という単語に注目して探した結果、 以下の二つの世界遺産が似ていると判断しました。

シルクロード

東西交易の主要ルートだった古代からの道で、世界遺産には道のほかに中心都市の城、 交易都市の歴史地区、関所などの防衛施設、仏教寺院などの宗教施設が含まれています。 ただ、広大すぎるので中国・カザフスタン・キルギスの「長安-天山回廊」と、 タジキスタン・ウズベキスタン・トルクメニスタンの「ザラフシャン=カラクム回廊」に わけて登録されています。

カパック・ニャン:アンデスの道

アルゼンチン・チリ・ボリビア・ペルー・エクアドル・コロンビアにまたがる、 インカ帝国を支えた交流の道です。 道の他に、重要拠点に置かれた宿泊施設や宗教的な建造物も構成遺産に含まれていて、構成資産は291にもなります。

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関係する外部サイト

日本遺産「旅人たちの足跡残る悠久の石畳道」

日本遺産である箱根旧街道(通称:箱根八里)の紹介ページ

日本遺産「日本初「旅ブーム」を起こした弥次さん喜多さん、駿州の旅」

静岡県内の東海道に関する日本遺産の紹介ページ

日本遺産「江戸時代の情緒に触れる絞りの産地」

日本遺産に登録されている有松についての紹介ページ

日本遺産「木曽路はすべて山の中」

中山道のなかでも日本遺産に登録されている、長野県と岐阜県の木曽路についての紹介ページ

ー東海道と中山道に関する主な博物館・資料館は以下のとおりですー

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作成者から

五街道の中でも重要な二つの街道についてまとめました!

ただ、東海道と中山道は地域ごとにバラバラで史跡になっていたり日本遺産であったりするので、 その全容を把握するのは難しかったです、、、
そして恐らくは、まだ私が把握できていない文化財があるはずです。
それと、皆さん思われたかもしれませんが、
「道も繋がっていないし、構成する文化財も90くらいあって、世界遺産になれるの?」
という疑問については、問題ありません!

道が世界遺産になっている「紀伊山地の霊場と参詣道(熊野古道)」では、 古道がぶつ切り状態でも世界遺産に登録されています。 他にも、似ている世界遺産でも書いた「カパックニャン」では、 道のほかに沿道の291の文化財が構成遺産として世界遺産に登録されています。

要は、道は一本そのままである必要もないですし、 1つのストーリーを語る上で欠かせないのなら文化財の数はあまり関係ないということです。 何より、日本遺産が4つもあるというのは、少しもったいないと思います。

もっと広い枠組みで地域の文化財を発信してもいいのではないか、と私は強く思います

最後になりましたが、このページを最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今後もまだ見ぬ日本を、世界遺産に当てはめて紹介していきますので、よろしくお願いします!

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構成遺産に関する情報以外の参考文献・サイト

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